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トラクターは、土を耕したり、収穫したりと農業の生産性を高めるために欠かせない機械です。
トラクターは長く使用することが想定されますが、その間、経理上は減価償却することになるため、耐用年数や計算方法について知っておく必要があります。
また、耐用年数以上に使用するための適切なメンテナンスや、寿命がきたトラクターの処理について知っておくことも大切です。
まずは、確定申告に関わる耐用年数について基本を押さえておきましょう。
耐用年数と合わせて、トラクターの年式の調べ方も押さえておいてください。
耐用年数とは、固定資産が業務上の利益を得るために使用できる年数のことを指します。
確定申告において減価償却費を計算する際、固定資産の取得価額を耐用年数で割り、それを毎年の償却費として計上します。
トラクターの場合、法定耐用年数は7年です。これは法律で定められており、個々の判断で変更することは認められていません。
この耐用年数7年は新品で購入した場合の基準であり、中古で購入した場合は異なる計算式が適用されます。
つまり、トラクターを新品で購入した場合、その価値は7年間にわたって減少していくと見なされ、このときの減価償却費は、トラクターの購入価格を7年で割った金額となります。
ちなみに、トラクターだけでなく、草刈機や運搬車など農機具は原則的に一律7年です。
以前はトラクター8年、田植機5年など機器によってバラつきがありましたが、平成20年度の税制改正により現在のようになりました。
トラクターの寿命は主に「稼働時間」によって決まります。
稼働時間とは、エンジンが稼動している時間を指し、トラクターに備え付けられたアワーメーターで測定できます。
トラクターの平均寿命は一般的に10〜20年とされていますが、これはトラクターがどれだけ稼動したかに大きく依存するため、絶対的なものではありません。
また、寿命の計算には「馬力×100時間」という指標も用いられます。
例えば、25馬力のトラクターの場合、2500時間が目安の寿命となります。
しかし、これは定期的なメンテナンスを十分に行っている場合の数値であり、メンテナンスが不十分だと寿命は短くなる可能性が高くなるでしょう。
トラクターは最低でも1000時間の稼働は見込めるといわれますが、1日に長時間使用する場合、その分、寿命も早まると考えるのが自然です。
稼働時間が1000時間を超えると、エアコンの故障やオイル漏れなどの不具合が生じやすくなるため、早めの修理やメンテナンスが重要となります。
中古で購入したトラクターの耐用年数の算出は、新品の場合とは異なります。
中古トラクターが購入時点で、法定耐用年数を全部経過している場合、以下のように耐用年数を考えます。
例えば、8年間使用した中古のトラクター(法定耐用年数が7年)を購入した場合、耐用年数は1.4年(7年の20%)となりますが、これは2年未満なので、耐用年数は2年となります。
中古トラクターが購入時点で、法定耐用年数を途中まで経過している場合、以下のように耐用年数を考えます。
例えば、4年間使用した中古のトラクターを購入した場合、残りの耐用年数は3年(7年 – 4年)です。
さらに経過した4年の20%(0.8年)を加えて計算すると、耐用年数は3.8年となりますが、端数を切り捨てると3年となります。
つまり、耐用年数は3年です。
減価償却中にトラクターを処分する場合の経理上の処理には、帳簿上で未償却残高を「0」にする必要があります。
具体的には、まずトラクターを廃棄する月までに発生した減価償却費を計上します。
これはトラクターの購入から廃棄するまでの期間にわたって発生した減価償却の合計額です。
その後、廃棄時点での未償却残高を「固定資産除却損」として帳簿に記録します。
例えば、トラクターの未償却残高が150,000円だった場合、この金額を借方に「固定資産除却損」として記入し、貸方には同額を「車両運搬具」などと記入し、借方・貸方ともに150,000円を記載します。
また、廃棄した月までの償却分を計上しない選択肢もあります。
その場合、その年の「期首の未償却残高」全額を「固定資産除却損」として計上します。
どちらの方法を選んでも、最終的な合計額は変わらないため、より理解しやすい、または管理しやすい方法を選択するとよいでしょう。
減価償却中のトラクターを売却する際の経理処理は、トラクターの売却価格とその時点での未償却残高に基づいて行われます。
トラクター売却時の処理方法は、売却した月までの減価償却費を計上するか、または「期首の未償却残高」を譲渡所得の取得費用として計上するかの選択ができます。
この選択は、売却によって生じる利益(売却益)や損失(売却損)に影響を与え、結果として税負担にも影響を及ぼすため、重要です。
売却価格が未償却残高を上回る場合、売却益が発生し、この益は譲渡所得として扱われます。
事業所得にはならないため、注意が必要です。
一方、売却価格が未償却残高を下回る場合、売却損が生じ、これは「固定資産除却損」として計上されます。
売却時の処理は複雑になることがあり、特に税務面での影響が大きいため、どのように計上するかは税務の専門家の助言を得ることが望ましい場合があります。
トラクターの減価償却に関する仕訳処理は、その購入価格に応じて異なります。
購入金額が10万円未満の場合、トラクターは「少額の減価償却資産」として扱われ、全額が即時損金として計上可能です。
少額の減価償却資産は、使用期間が1年未満、または取得価額が10万円未満の場合に適用されます。
例えば(トラクターの相場では現実的に想定しづらいですが)、中古などでトラクターを9万円の現金で購入した場合、借方には9万円を「農具費」として、また貸方に同額9万円を「現金」として記入します。
購入金額が10万円以上の場合、トラクターはいったん資産計上され、その後、耐用年数に応じて減価償却されます。
新品の農機具の耐用年数は、一律7年です。
たとえば、新品トラクターを70万円で購入した場合、借方に70万円を「機械装置」として、また貸方には同額70万円を「現金」として記入します。
期末には、減価償却費として70万円を7年で割った10万円を借方に、機械装置として10万円を貸方に記入します。
中古トラクターの場合、法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に、経過年数の20%を加えた年数が耐用年数となります。
例えば、2年使用された中古トラクターを50万円で購入した場合、購入時には借方に50万円を、「機械装置」として貸方に同額50万円を「現金」として記入します。
耐用年数は(7年 – 2年)+(2年 × 20%)= 5.4年となりますが、小数点以下は切り捨てられるため5年となり、減価償却費は50万円を5年で割った10万円を借方に、機械装置として同額10万円を貸方に記入しましょう。
トラクターの寿命を引き伸ばすためには、定期・不定期のメンテナンスや適切な保管方法が大切です。
トラクターの寿命を引き伸ばすためには、定期・不定期のメンテナンスや適切な保管方法が大切です。
日常的なメンテナンスとして重要なのが、洗浄とグリスアップです。
まず洗浄については、高圧洗浄機を使用して行います。
農作業においてトラクターは泥だけでなく、肥料などに含まれる成分にも晒(さら)されることになります。
このような成分は作物にとっては栄養となりますが、トラクターにとっては金属の腐食を引き起こすリスク要因になる可能性があるのです。
泥は乾燥して固まると落ちにくくなるため、使用後はできるだけ早く洗浄しましょう。
洗浄時には、車体の下部やタイヤホイールの内側なども念入りに行います。
ただし、パネルやエンジン回りなど水がかかると故障の原因になる部分は避ける必要があります。
また、トラクターの部品同士が接触する摺動部には、グリスアップを行いましょう。
農作業でトラクターを使用していると、汚れとともに油分も流れ落ちるため、グリス(半固体または半流動性の潤滑剤)を定期的に注入する必要があります。
このような日常的なメンテナンスを適切に行うことで、トラクターの性能を維持し、その寿命を延ばすことができます。
定期的なメンテナンスとして、エンジン部分の手入れは欠かせません。
エンジンオイルの交換は、トラクターの型式によって異なりますが、一般的に初回は使用開始から50時間後、その後は200時間ごとに行うのが目安です。
古いオイルを使用し続けると、エンジン内部の機能が低下し故障の原因になる可能性があるため、注意しましょう。
オイル交換時には、オイルの汚れを取り除くフィルタも同時に交換することが望ましいです。
定期的なメンテナンスとしては、エンジン以外にもバッテリーやファンベルトの点検、エアクリーナエレメントの清掃などが挙げられます。
また、年に一度は冷却水の交換とラジエータスクリーンの掃除を行い、エンジンへの余分な負荷を防ぐことも重要です。
走行部のチェックも必要で、タイヤの空気圧や亀裂、摩耗の確認や、ボルトやナットが緩んでいないかをチェックしましょう。
このような定期的なメンテナンスを行うことで、トラクターは長期間にわたって高い性能を維持でき、結果として寿命を延ばすことができるようになるのです。
トラクターにとって雨風はサビの原因となりうるため、屋根があるガレージなどでの保管が理想的です。
屋外保管が避けられない場合は、ブルーシートなどでカバーすることで、野ざらしによる損傷を防げます。
燃料タンク内に空間があると水滴が発生し、サビの原因になり得るため、燃料タンクは満タンに保つことが望ましいです。
また長期保管の場合、バッテリーの自然放電による劣化を防ぐためには、バッテリーのマイナス端子を外しておくと良いでしょう。
さらに、必要な箇所にはオイルやグリスを注油して、部品の摩耗やサビを防ぎます。
このような保管方法により、トラクターは長期間にわたって良好な状態を保つことができ、結果として寿命を大幅に延ばすことができます。
トラクターの耐用年数について解説しました。
トラクターの法定耐用年数は、7年であり、この期間は、減価償却して計上していくことになります。
また、新品のほか、中古で購入した場合や、減価償却中にトラクターを処分・売却した場合についても説明しました。
トラクターは、このような耐用年数が決められていますが、使用のたびに掃除をするなど適切に扱えば、耐用年数以上に使用することもできるため、正確なメンテナンスの知識を持っておくことは重要です。
最終的には、耐用年数が過ぎて寿命を迎え、動かなくなる瞬間が訪れることが予想されますが、そのようなトラクターでも売れる可能性があります。
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