儲かる農業とは?収益を左右する作物選びと経営方法

日本の農業は今、大きな転換期を迎えて います。「儲からない」と言われてきた農業が、今まさに新たな可能性を開こうとしています。

技術革新、経営戦略、そして農家の創意工夫により、農業は単なる生業から、魅力的なビジネスへと進化しつつあるのです。

本記事では、農業は儲かるのかという疑問を持つ人に対して、農業の平均的な所得や収益性の高い作物、収益性を高めるための方法について解説しています。

目次

農業は儲かるのか

農林水産省が公表した「令和4年 農業経営体の経営収支」によれば、全農業経営体(個人経営体及び法人経営体)の平均農業粗収益は1,165.6万円でした。一方、農業経営費は1,067.4万円で、農業所得は98.2万円となります。

農業所得のグラフ

引用:令和4年 農業経営体の経営収支

また、主業経営体(農業所得が主で、自営農業に60日以上従事している65歳未満の者がいる経営体)においては、農業粗収益が2,035.9万円で、農業経営費は1,673.0万円だったため、農業所得は362.9万円となっています。

農業所得のグラフ

引用:令和4年 農業経営体の経営収支

農業の収益性については、一般的な統計データから「儲からない産業」というイメージを持たれがちです。確かに、令和4年の日本の平均年収458万円と比較すると、多くの農業経営体の農業所得は下回っているように見えます。

しかし、この単純比較には慎重になる必要があります。農業経営の実態は多様であり、専業・兼業の別、経営規模、栽培品目、地域特性など、さまざまな要因が収益性に影響を与えているのです。

さらに、近年では先進的な技術導入や経営手法の革新により、収益性を大きく改善している事例も見られます。例えば、ICT技術を活用したスマート農業の導入、環境制御技術による収量・品質の向上、マーケティング戦略の強化などが挙げられます。

有機農業や特別栽培など、付加価値の高い農業にシフトすることで、所得向上を実現している農家も少なくありません。

つまり、農業の収益性は経営者の創意工夫と戦略的な取り組みによって大きく変わり得るのです。

儲かる農業の特徴

儲かる農業に共通しているのは、以下の項目です。

  • 経費が少ない
  • 労働時間が少ない
  • 面積が広い
  • 作物が高単価

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

経費が少ない

農業には、多くの経費がかかるため、これらをいかに抑えるかが経営に大きく関わります。肥料費や肥料費、農薬費、光熱費、人件費のほか、機械の減価償却費や施設の維持費といった固定費をいかに安く済ませられるかが重要です。

例えば、適切な土壌管理により肥料の使用量を減らしたり、防除回数を必要最小限に抑えたりすることで、生産コストを大幅に削減できます。

また、中古農機具の購入や売却、機械の共同利用なども有効な経費削減策として挙げられます。

労働時間が少ない

労働時間が少ないこともポイントです。設備投資や効率的な作業計画を立てることで、労働時間を短縮しながらも効率的な農業経営を目指せます。

特に、ドローンやGPSを活用したスマート農業技術の導入は、労働時間の大幅な削減に繫がります。労働時間を減らすことで、労働力にかかるコストも削減され、収益性がさらに向上するのです。

また、作物によっても収益性や労働時間が変わるため、よりコストパフォーマンスが良いものを選ぶことも重要です。

面積が広い

経営面積の拡大も収益性向上に寄与します。規模を拡大することで、機械や施設の稼働率が上がり、単位面積当たりの固定費を減らすことが可能です。

また、まとまった量の生産により、資材の大量購入によるコスト削減や、販売時の価格交渉力の向上も期待できます。ただし、単純な規模拡大ではなく、適切な管理が可能な範囲での拡大をすることが大切です。

作物が高単価

高付加価値の作物や需要が高い作物を選べば、同じ面積でも収益が大きく異なります。例えば、有機野菜やブランド品種などの高価な作物は需要が安定しており、収益率が高くなります。また、直売や契約栽培など、独自の販路開拓により、より高い販売価格を実現している農家も増えています。

農業で儲かる作物

農業には多様な作物がありますが、収益性の高い作物の代表としてミニトマト、キャベツ、稲作を取り上げます。

ミニトマト

ミニトマトは、高収益が期待できる作物のひとつです。少ない土地でも多くの収穫ができ、大玉トマトと比べて単価が高く、消費者からの需要も安定しています。ビニールハウスでは天候に左右されずに安定した生産が可能となり、高単価での販売が期待できます。

ただし、初期投資として温室やハウスの建設費用が必要で、また温度管理や水分管理など、きめ細かな栽培技術が求められることに注意が必要です。

キャベツ

キャベツも収益が見込める作物のひとつです。キャベツは栽培サイクルが短いため、短期間での出荷が可能であり、また需要が年間を通じて安定しています。価格変動も少ないため、安定した収益を見込むことができる作物です。

特に産地ブランドがある地域では、高品質のキャベツが市場で高く評価され、他の一般野菜よりも良い収益を得られる期待が持てます。

稲作

米は日本の主食であり、国の支援や補助金も充実しているため、一定の安定収益が見込める作物です。

稲作は広い面積での栽培が一般的であり、規模の経済を活かすことができます。近年では、機械化が進んでおり、労働時間の削減ができるようになってきました。

ただし、稲作は天候に大きく影響されるため、収穫量や品質が年によって変動するリスクがあります。また、米の価格は市場の需給バランスに左右されやすく、価格の安定化が課題となっています。

それでも、地域によってはブランド米として高付加価値をつけることで、収益性を高めることが可能といえるでしょう。

農業で儲かるために必要なこと

農業で収益を上げるためには、作物の単価を上げること、生産量を増やすこと、そして農地を有効活用することが欠かせません。それぞれについて詳しく説明します。

作物の単価を上げる

作物の単価を上げるためには、高付加価値な商品を提供することが求められます。例えば、有機栽培や特定のブランド品種を選ぶことで、消費者にとっての価値を高め、高価格で販売しやすくなります。

また、直販や地元の市場での販路拡大により、流通コストを抑えて収益性を高めることも効果的です。ブランディングを行い、「この地域ならではの作物」として認知されることで、より高い価格での販売が実現します。

生産量を増やす

生産量を増やすためには、効率的な栽培方法や技術の導入が不可欠です。最新の農業機械や自動化技術を活用することで、作業の効率を高め、収穫量を増加させることができます。

また、適切な肥料や水分管理、病害虫の防除を行うことで、作物の生育を促進し、収穫量を最大化することが可能です。さらに、作物の選定においても、成長が早く収穫までの期間が短い品種を選ぶことで、年間の生産回転率を上げることができます。

農地を有効活用する

また、農地の利用効率を高めることも、収益率アップには必要です。農地の面積を増やすことや、複数の作物を同時に栽培することで、リスクを分散させつつ収益を最大化することができます。

農地の有効活用により、土壌の健康を保ちながら、異なる作物からの収益を得ることができます。さらに、農地の一部を利用して加工品を作るなど、付加価値を生む取り組みも収益を向上させる手段となるでしょう。

まとめ

農業で利益を上げるには、効率的な経営が不可欠です。経費削減、労働時間の効率化、適切な作物選択、農地の有効活用など、多角的なアプローチが収益向上の鍵となります。

今後、注目すべきは、スマート農業やICT技術、環境制御技術であり、従来の農業の常識を覆す可能性を秘めています。

また、農業経営の効率を高めるには、古くなった農機具の見直しも大切です。不要な農機具を整理し、新たな技術や機械への投資資金に充てることで、経営の改善が図れます。

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