スマート農業のメリット・デメリットとは？次世代の技術が労働力不足を解消する

労働力不足が深刻化して久しい農業に、新たな光をさすのがスマート農業です。スマート農業は、先進技術を用いて農業の効率化を推進するソリューションとして、熱い視線が注がれています。

本記事では、スマート農業について、その目的やメリット・デメリットについて説明します。

スマート農業とは何か

スマート農業は、ICT（情報通信技術）やロボット技術を駆使し、農業の作業効率や品質向上を高める、次世代の農業です。日本のようにICTの普及が進む社会全体において、重要視されています。

伝統的な農業では多くの作業が人の手に依存しているため、スマート農業による作業の自動化や最適化が求められています。

この背景にあるのが、農業従事者の不足という大きな課題です。人口の高齢化と若者の農業離れにより、農業に従事する人々が減少しており、これが作業の負担増加や生産性の低下を引き起こしています。

スマート農業は、このような問題に対処する有効な手段として考えられており、農作業の自動化によって人手不足の解消や作業負担の軽減を図ることが期待されています。

スマート農業の目的

ICTやロボットを利用したスマート農業が目指すものとして、以下の項目が挙げられます。

• 労働力不足の解決
• 食料自給率の向上
• 農業技術の継承

これらについて解説します。

労働力不足の解決

スマート農業の主要な目的のひとつは、少子高齢社会における労働力不足の解決です。特に農業分野では、労働人口の減少が顕著であり、物理的な負担が大きい作業を継続することが難しくなっています。このような背景のもと、労働力の確保と作業の効率化は、日本の農業が直面する重要な課題となっているのです。

スマート農業は、このような課題に対応するためにICTやロボット技術を活用しています。ICTやロボットにより、肉体的な労働を機械が補助または代行することで、人手に依存する部分を減らし、少ない労働力でも高い生産性を保つことが可能になるのです。

例えば、自動化された植物の水やりシステム、収穫を助けるロボット、作物の健康状態を監視するセンサーなどが挙げられ、これらは作業の効率化だけでなく、農作物の品質管理にも寄与しています。

このような技術は、農業の持続可能性を高め、労働力不足の問題を解決に導いてくれるでしょう。

食料自給率の向上

スマート農業が目指すもうひとつの主要な目的は、低い食料自給率の向上です。2023年度の日本の食料自給率は38％と低く、国内で消費される食料の大部分を輸入に頼っている状態です。

参考：農林水産省「日本の食料自給率」

この水準は、国家の食料安全保障にとって大きなリスクを招く可能性があり、自国での食料生産能力の強化が急務とされています。

食料自給率の課題に対して有効な解決策を提供するのが、スマート農業です。先進のICTやロボット技術は、農業生産を効率化し、限られた労働力や資源を最大限に活用することを可能とします。

例えば、精密農業技術を用いて土地の利用効率を高め、作物ごとに最適な水や栄養を供給することで収量を増やすことができます。また、データ分析を活用して病害虫の予防や早期発見を行うことで、作物の損失を減らし、収穫量を安定させることもできるでしょう。

このように限られた労働力でも農業の生産力を高め、食料自給率の向上に貢献することがスマート農業に期待されているのです。

農業技術の継承

日本の農業では、労働力の主体が高齢者であり、若者や後継者の不足が顕著になっています。農業技術は長い時間をかけて習得する必要があるため、新たにこの分野に入る人々にとって高い障壁となっているのです。

そこで、このような農業技術の継承を容易にしてくれるのが、スマート農業です。スマート農業では、熟練した農業者の知識や技術をデータベース化し、これをAIなどのテクノロジーを通じて共有・再現します。これにより、新規に農業を始める人々が、長年にわたる実践を通じてのみ得られた知識をより短期間で習得できるようになります。

技術の継承は、新規就農者が直面する学習コストと時間の削減につながり、農業への参入障壁を低下させます。さらに、AIを用いた作業の自動化によって、技術を完全に習得していない新規就農者でも一定レベルの生産力を保つことができるようになります。

以上のようにして、農業技術の継承は効率化され、より多くの人が農業に関わることができるようになり、農業の持続可能性に貢献するのです。

スマート農業のメリット

スマート農業に期待される主なメリットは、以下の通りです。

• 農作業の効率化
• コストの削減
• データの収集と活用

ひとつずつ説明します。

農作業の効率化

スマート農業の大きなメリットのひとつは、農作業の効率化です。これは、ICT技術によって農作業に関する情報をデータ化し、それをネットワークを通じて一元管理することができるようになることに関係しています。

例えば、遠隔地からのカメラを通じて農作物の状態をリアルタイムで監視でき、そのデータをもとにAIが最適な判断を行なうシステムがあります。このようなシステムがあれば、農業従事者は物理的な距離や時間に縛られることなく、農作物の状態を把握し、必要な措置を迅速に取ることが可能です。

さらに、実際の作業はロボットが担うことにより、人間の労働者にかかる肉体的な負担が大幅に軽減されます。この効率化は、人手不足や高齢化が進む農業現場において、作業の持続可能性を高める重要な要素です。

コストの削減

スマート農業がもたらすもうひとつの大きなメリットは、コストの削減です。

特に大規模な農場の場合、人件費が大きなコストとなります。また、小規模な農場でも、農作業は天候に左右されながらも継続しなければならないため、労働力の確保と管理にさまざまなコストが発生します。

そこで、活用できるのが、自動運転できる農機具や収穫ロボットなどのスマート農業です。自動化技術によって、農作業に必要な人手を減らすことが可能になり、それに伴い人件費の削減が実現します。さらに、完全自動化が難しい場合でも、スマートフォンを使った遠隔操作による半自動化が実現でき、労働者が現場にいなくても問題がなくなります。

このように、スマート農業は人件費をはじめとするコストの削減に貢献してくれるのです。

データの収集と活用

スマート農業では、センサーや気象情報システムを通じてさまざまなデータを収集、分析します。収集された、土壌の湿度、温度、作物の成長状態、気象条件などのデータは、リアルタイムで分析され、農作物の成長に最適な条件を出力するのに役立てられます。

このようにして収穫予測の精度が高まり、農作物の品質向上が実現します。例えば、センシングデータをもとにした病害リスクの早期警告システムによって、作物への潜在的な脅威を事前に識別し、適切な対策を取ることができます。その結果、収穫量の増加や品質の向上が期待されるのです。

また、データの収集と分析は、作業記録や位置情報といった実際の農作業データにも及びます。このような情報を統合することで、農作業の効率化や最適化に繋がり、時間とコストの節約を実現できます。

スマート農業のデメリット

スマート農業を導入する際のデメリットとなるのが、以下のような項目です。

• 導入コストがかかる
• 最新機器を理解する必要
• 農業機器の連携が弱い

これらについてそれぞれ説明します。

導入コストがかかる

スマート農業を導入するには、当然ながらコストがかかります。先進的なセンサー、自動運転農機、収穫ロボット、データ分析を行うための高性能なコンピューターシステムなど、多くの高価な機器が必要になります。このような設備やシステムは、特に小規模な農家にとって、大きな経済的負担となるでしょう。

なるべくコストを抑えるには、いくつかの解決策が考えられます。例えば、機器やシステムのリースです。リースは、初期投資を抑えながら最新の技術を導入する方法として有効です。また、政府や地方自治体からの補助金の利用も考えられるでしょう。さらに、既存の農機具を売却して資金を確保するという方法もあります。

以上のように、スマート農業の導入を検討する際には、初期投資の回収期間や長期的なコスト効果を慎重に評価することが重要です。

最新機器を理解する必要

スマート農業の導入に伴うもうひとつのデメリットは、最新機器の理解と慣れに関する課題です。スマート農業に使用される機器は、先進的なテクノロジーを利用しているため、従来の農業機械や作業方法とは大きく異なります。そのため、特に高齢の農業従事者にとって、新しい技術への適応は大きな挑戦となることが懸念されるのです。

新しい技術を取り入れることは、操作方法の理解だけでなく、新しい機械の効率的な使用方法やメンテナンスに関する知識も必要とします。これらを新たに学習するには、時間と労力を要し、最新技術に不慣れな人にとっては、大きなストレス源となるでしょう。

そのため、スマート農業導入の際には、十分なトレーニングやサポート体制を整えることが必要です。操作方法のデモンストレーションや定期的なフォローアップがあれば、最新機器の理解をスムーズに進めることができるでしょう。

農業機器の連携が弱い

さまざまなメーカーから提供される農業機械やシステムは、それぞれ独自の仕様を採用していることが多いです。そのため、異なるメーカーの製品間での連携ができない可能性があります。

例えば、あるシステムで収集したデータが別のシステムに連携しないために、その都度、手動でデータ移行しなければならないなどの工数が発生します。このような状況では、特定の農場内で異なるメーカーの機械を組み合わせて使用する場合、不都合が生じてしまうでしょう。

このような問題に対処するためには、同じメーカーなど互換性のある製品を選択することが挙げられます。また、一部の製品では、異なるシステム間でデータを共有するための工夫が施されているため、そのような仕様になっているかどうかを確認することも大切です。

まとめ

次世代の農業として注目されているのが、スマート農業です。ICTやロボット技術を搭載したスマート農業の機器は、従来の農業が直面していた課題に新たな息吹を注ぎます。

スマート農業は、農作業の効率化・省力化、コスト削減、技術の継承などを実現可能なものにしてくれるでしょう。

しかし、スマート農業の導入には初期費用がかかります。初期費用を抑えるには、リースの利用などいくつかの方法が考えられますが、使用しなくなった農機具を売却して、その資金を導入費用に充てるのもひとつの方法です。

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